2026年9月21日|沖縄の生きもの・ジュゴン・海草藻場・自然保護

沖縄のジュゴンはどこで暮らす?海草藻場と北限の海

沖縄の浅い海に広がる海草藻場。その緑の海底を餌場にするのが、国の天然記念物ジュゴンです。姿に出会うことはきわめてまれですが、喰み跡やDNAなどの手がかりから今も調査が続いています。ジュゴンを探しに行くのではなく、暮らせる海がどんな場所なのかを知ってみましょう。

沖縄の浅い海の海草藻場を泳ぐジュゴンを描いた生成イメージ

沖縄は西太平洋における分布の北限

ジュゴンは、西太平洋からインド洋、紅海にかけての熱帯・亜熱帯の浅い海に暮らす海の哺乳類です。沖縄県が2026年3月に改訂した「ジュゴンのはなし」によると、沖縄県周辺の海は西太平洋における分布域の北限にあたります。

沖縄のジュゴンは個体数が極めて少ないと考えられ、環境省レッドリストとレッドデータおきなわでは絶滅危惧IA類。国指定天然記念物、種の保存法に基づく国際希少野生動植物種、沖縄県条例に基づく指定希少野生動植物種として守られています。

ジュゴンとマナティーは、尾びれで見分ける

ジュゴンもマナティーも「海牛類」の仲間ですが、別の科に分かれます。よく似た丸みのある体でも、尾びれの形にはわかりやすい違いがあります。

比べるところ ジュゴン マナティーの仲間
尾びれ中央がくびれた三角形で、クジラやイルカに近い形丸いうちわのような形
主な分布西太平洋・インド洋・紅海の沿岸大西洋側やアマゾン川流域など
食べもの主に海草水草など植物質

表は沖縄県「ジュゴンのはなし(第3版)」をもとに、旅行者向けに要点を整理したものです。

餌は「海藻」ではなく「海草」

ジュゴンは海草類を食べます。海草は、コンブやワカメのような海藻とは異なり、根を張り、花を咲かせ、種をつくる植物です。浅く光が届く砂泥の海底に群落をつくり、その場所を海草藻場と呼びます。

海草藻場は、ジュゴンの食卓であるだけではありません。小さな魚や生きもののすみかになり、海底の砂が流れ出すのを抑える役割もあります。ジュゴンを守ることと、海草藻場を守ることは切り離せません。

姿が見えなくても、暮らしの手がかりは残る

個体数が少なく、広い海を移動するジュゴンの調査は、姿を目撃するだけでは十分ではありません。海草を食べた跡、糞に含まれるDNA、写真など、複数の手がかりを組み合わせます。

時期 確認された手がかり 読み取れること
2019年八重山地方の聞き取り調査で、親子の目撃情報などを確認八重山で生息している可能性を示す情報
2023年名護市久志と伊良部島の海草藻場で採取した糞からDNAを検出姿を見なくても、利用した海域を科学的に探れる
2025年久米島で個体を撮影近年も沖縄県内で個体が確認された記録

沖縄県「ジュゴンのはなし(第3版)」に掲載された確認情報の一部です。確認地点の存在は、旅行者がその場所へ探しに行けば会えることを意味しません。

海草の「喰み跡」を調べる

ジュゴンが海草を根元近くから食べると、藻場に細長い筋のような跡が残ることがあります。沖縄県はこれを「喰み跡」と呼び、ウミガメなどの食べ跡と区別する定義を設けて調査しています。

ただし、似た跡を旅行者が見ただけでジュゴンのものと判断することはできません。藻場へむやみに入って踏み荒らしたり、正確な位置情報をSNSで広めたりせず、専門家による調査に任せることが大切です。

ジュゴンの暮らしを脅かすもの

沖縄県は、漁網による混獲、船舶との衝突、海草藻場の縮小や環境悪化などを脅威として挙げています。ジュゴンの行動範囲と、人の漁業・船舶活動が重なるため、保全には地域社会や漁業者との協力が欠かせません。

旅行者にできるのは、追わずに海を大切にすること

ジュゴンは観光中に簡単に出会える動物ではありません。希少な生きものを探して船やドローンで追うのではなく、海草藻場を含む浅い海の環境へ負担をかけない行動を選びましょう。

一頭を見ることより、何世代先も暮らせる海を残すこと。その視点を持つと、何気ない浅瀬の緑にも大切な意味が見えてきます。

参考にした公的情報

海草藻場が生きものを育てる役割は「沖縄の海草藻場は魚のゆりかご」、浅いサンゴ礁の地形は「沖縄の浅い海『イノー』とは?」も参考にしてください。

ブログ一覧では、沖縄北部の海の生きもの、自然、安全、旅行準備を紹介しています。

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